「IchigoJam」と「SmileBASIC」と「MIT Scratch」の比較 「教育の現場で利用できるか?」


脳内遊びのオモチャ環境が増えつつあるのですが、先日「IchigoJam」が起動したところなので再度三者の比較をしてみたいと思います。

これから始まる小中高生のコンピュータ教育の義務化に伴うプラットフォームがどうなのか気になるところです。三者三様のユニークさがありますが、マイクロソフトもマイクラで狙っていようですから競争が激化するでしょう。

まず現状のユーザー層について比較すると、これが全然違います。


「MIT Scratch」の世界に住んで約半年になりますが大人はほとんどいません。皆無に近いと言ってよいほどで、世界中のオコチャマが集まっています。ユーザ年齢層がかなり低くて小学校の低学年かそれ以下の幼児も多数参加しています。ほんどお絵描きの延長でコミュニケーションを楽しんでいる感じです。海外で流行っているのか意味不明のネコ漫画で埋め尽くされています。小難しいプログラムテクニックなんて全く関係のない世界です。「Awesome、Cool」で終わりです。(笑)

公開されたアプリは国境なく利用できますが、説明やコメントの公用語は英語となるので日本人の子供は少ない感じです。日本の子供たちは独自にサークルを作って集まっているようです。

そんな子供ばかりの中に、カリスマっぽいスター的な大人ユーザがいて沢山の信者的な子供達が付いています。このカリスマユーザが一言「いいね」と評価すると物凄い勢いでアクセスが集中したりします。ちょっと可笑しな宗教団体的な世界です。

この世界で大人がうまくコミュニケーションをとることはかなり困難です。公園の砂場で幼児と一緒に遊んで会話しているようなものです。それに耐えられる忍耐力と寛容さが何より大切な環境です。

「プチコン3号 SmileBASIC」は3DSのゲーム機を利用することもあって、ユーザ層は中高生から大人までバランスよく利用されています。中には市販品並みの高度なプログラムを開発している方もいますが、ハード的に限定されたクローズの世界なのでコミュニケーションも含めてあまり広がっていない感じです。
SmileBASICは海外向けにも販売されているのでそちらで火が付くかもしれませんが、とにかくこのクローズな環境は決して一般には波及しないので大きなウェーブにはならないでしょう。その箱庭的なチマチマ感を楽しむゲームの一種だと考えておくのが良いかと思います。


「IchigoJam」は起動してまだ数日ですが、情報のウォッチは半年前からやっていたので大体のイメージは掴んでいます。タイトル的には「こどもパソコン」となっていますがコアなユーザー層は相当な高齢者です。ソフトより電子工作マニアの技術者の砂場状態で、素人がおいそれと近づけないほどの加齢臭が漂っています。「シニアパソコン」といったほうが適当かもしれません。ナードではなくギークの世界で、正直この世界に子供が入り込むのは難しいでしょう。
電子キットとしてハンダ付けから制作できますが、その作業がどれほどの意味があるかは疑問です。意味も分からない電子部品をただ火傷にだけ気を付けてハンダ付けしても無意味でしょう。小学生の農業体験で水田に入って田植えをするようなものです。今時は手植えなんてほとんどしませんからね。(笑)

ちなみに先日のIchigoJam組み立てビデオで使っていたハンダごては中学生の技術の時間に自作したものです。当時は意味も分からずラジオを組み立てましたが、そのハンダごてを今でも使っています。こんなヤツは極まれだと思います。(笑)


◆ソフト環境について

「MIT Scratch」はマウスを使ってプログラムチップをくっ付けていくプログラム方式なので簡単そうに見えますが、操作的に非常に手間がかかる環境です。キーボードからプログラムを打ち込むほうが遥かに効率的なのはいうまでもありません。用意されている命令語はそれほど多くなく、基本的に絵を画いてそれを動かす感じのプログラムになります。
Actionscriptの上に独自のインターフェースを乗せてその窓から覗いているだけなので出来ることは限られてきます。ネイティブではないための課題もいくつかあります。(省略)

「SmileBASIC」はコンシューマー機の3DSで動作しますが、ゲーム機らしい機能をうまく纏めた開発環境になっています。用意されている命令語もゲームに特化した高機能なものもあるのでゲーム制作にはよい環境でしょう。もちろんBSICの基本的な命令語も揃っているので高機能なポケコンとして機能します。もし足らない関数があれば自作も出来るので困ることもないと思います。

「IchigoJam」はNXP社のLPC1114という小さいマイコンの上に作られているためソフト環境的は極めてチープです。メモリの関係上、用意されているBASICの命令語もほんの極わずかでシンプルなものです。しかしその限れたレギュレーションが逆にとっつきやすいかもしれません。単純に文字を表示するとか計算をさせて結果を得るという基本的な学習には十分使えます。

「MIT Scratch」の教育における「構成主義」やら「構築主義」という小難しい理論とは対極な「教示主義」なものでしょう。しかし現実的にはこれで十分です。学ぶことの発見やその方法を自己学習することについては別の世界で学ぶべきことです。
「パソコンなんて弄っていないで外に出て遊べ」これが正しい教育です。
遊ぶことは何よりの学習です。遊ぶ方法考えてそれを互いに共有することが全ての文化の始まりです。


◆ハード環境について

処理速度的には「MIT Scratch」がダントツです。動作環境が普通のパソコンなので早くて当たり前です。かなり支離滅裂で無茶苦茶なプログラムを作っても力技で動きます。Legoのような特殊な環境を用意すれば外のハードとの連携も可能ですが限定的です。モーターのオンオフをコントロールしてタートルを動かしても大した意味はないかもしれません。
ただそのベースのパソコンをどうやって調達するのかが課題です。もし学校などで大量に調達するとなると、パソコン本体とOSライセンス、各種のセットアップ、ネットワークやウイルス対策等々の膨大なコストがかかります。またその維持費も相当なものになります。
子供に簡単なプログラム原理を教えるにしては贅沢すぎるハイソな環境かもしれません。もっと簡素な環境でも十分原理学習は可能だと思います。ちょっと教育というのを勘違いしてるのかもしれません。まっこんなところから経済主義の擦り込みが始まっているでしょうね。

「SmileBASIC」はハードが3DSということで動作速度はそこそこで、パットやタッチ、モーションセンサーやジャイロなど各種センサーが利用できてコンパクトに纏まった環境は高性能なポケコンと言えます。ただカメラやデータ通信、ファイル環境が任天堂縛りで自由に利用できません。ここが最大のネックです。オープン化に失敗した任天堂の将来は今後も厳しいでしょう。しかしプログラム環境としてはかなり整っているので高度なプログラムも組めます。
Scratchのようなノートパソコンを用意することを考えるとコスト的にはかなりお安くなります。ゲーム機なのでほとんど故障もありませんが、万が一の時の代替機も簡単に調達できます。電源も不要で小型で持ち運びも出来るので場所も取らず教材としてはうってつけかもしれません。


「IchigoJam」はキットで1500円という低価格は優秀です。
ただモニターやキーボード、電源は別に用意する必要があるので周辺機器に手間やコストがかかります。もちろん処理能力的には論外であることは言うまでもありません。しかしハード的なインプットやアウトプットを直接利用できるので色々な実験に応用できます。逆にそこを弄らなけば全く意味のない環境かもしれません。中高生向けの電子工作の学習の一環としては使える環境だと思います。


総じて「小さなコンピュータ」の需要が高まってきている感じです。
スマホが当たり前の時代に、昭和チックなタイニーコンピュータの存在意義が問われています。

来月には「PocketCHIP」も届く予定なのでまた検証していきたいと思います。



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